日本の新しいモデルを創る「新世代リーダー」とはどんな人なのか。どんな能力、教養、マイ ンドセット、行動が必要となるのか。国内外のリーダーを知り尽くした、各界の識者たちに「新世代リーダーの条件」を聞く。
第2回目は、京都大学客員准教授でエンジェル投資家の瀧本哲史さんが、これからの日本に求められるリーダー像について語る。
昨年から今年にかけて、『僕は君たちに武器を配りたい』『武器としての決断思考』『武器としての交渉思考』という3冊の本を出版した。
【詳細画像または表】
それ以来、エスタブリッシュメントの組織の比較的若い人たち、主に30、40代の人たちが私にコンタクトしてくるようになった。最近は、非常に硬直的なイメージが強い中央官庁で講演をしたし、日本を代表するエレクトロニクスメーカーからも話を聞かせてほしいと依頼があった。
これらは起きていることのほんの一部で、私の本を読んで、自分で何かをやろうという人が出てきているように感じる。
結局、新しい流れを作るのは世代交代。歴史を振り返っても、新しい動きを作った人はみんな若い人だ。ただ、その若い人たちは、若い人だけで何かをやったのではなく、必ず前の世代のサポートを受けている。
「これからの時代に、どんなスキルが必要なのですか」とよく質問される。だが、何か特定のスキルがあるかどうかは、さほど重要ではない。
新しい条件においては、既存のスキルとは違う新しいスキルが必要になる。だから、まずは新しい状況に飛び込んで、実践を通じてスキルを身につけていくほうがいい。若い人はとくに学習速度が速いので、そちらのほうが効率的だ。
そもそも、スキルよりも、ビジネスと関係のない教養のほうが役立つことも多い。 最近、講演をするときに、「ワイマール共和制を知っていますか」と聴衆に尋ねているが、知らない人が多い。受験勉強で、日本史や地理のほうが点数をとりやすいから、みんな世界史をしっかり勉強していない。
しかし、ワイマール共和制の知識は極めて重要だ。ナチス・ドイツが出現する前に、ドイツは極めて理想的な憲法を制定し、理想的な民主主義国家をつくろうとした。しかし、それはうまくいかず、人々は絶望してナチスによる独裁を選んだ。
そうした歴史な経緯を知っていれば、これからの日本で起きかねない怖いシナリオがすぐ理解できるようになる。それこそが教養の本質であって、世界史の年号や言葉を暗記することに意味はない。
■ 山中さんはなぜノーベル賞を取れたのか
これからの時代に求められるのは、中央集権的なリーダーではなく、群雄割拠的なリーダーだ。リーダーというとき、われわれは大きい組織のリーダーをイメージしがちだが、真に必要なリーダーは、最初は一人だったりする。
たとえば、ノーベル賞を受賞した山中伸弥さんも、賞につながるきっかけは、臨床医に挫折した後、奈良先端科学技術大学院大学で研究者として働いているときにあった。
日本の劣悪な環境に絶望しながらも、何とかメンバーを集めるために、みんなと違う研究テーマに取り組もうとして、独立行政法人の科学技術振興機構に予算を申請した。審査会では、ほとんどの人が「この研究はやめるべきだ」と反対した。ところが、元大阪大学総長の岸本忠三さんだけが、「これはやるべきだ」と言って予算がついた。それが、ノーベル賞受賞へとつながった。
だから、今求められているのは、山中さんのように、リスクが高い、うまくいくかどうかわからないことを最初に始める人だ。
リーダーの仕事とは、大企業のサラリーマンたちのやる気を無理やり出させることではない。そういうリーダーは日本に余っている。本当に必要なリーダーは、何もないところから始める一人目だ。もし、そういうリーダーが周りにいないなら、あなた自身がリーダーになって、新しいことを始めればいい。
第2回目は、京都大学客員准教授でエンジェル投資家の瀧本哲史さんが、これからの日本に求められるリーダー像について語る。
昨年から今年にかけて、『僕は君たちに武器を配りたい』『武器としての決断思考』『武器としての交渉思考』という3冊の本を出版した。
【詳細画像または表】
それ以来、エスタブリッシュメントの組織の比較的若い人たち、主に30、40代の人たちが私にコンタクトしてくるようになった。最近は、非常に硬直的なイメージが強い中央官庁で講演をしたし、日本を代表するエレクトロニクスメーカーからも話を聞かせてほしいと依頼があった。
これらは起きていることのほんの一部で、私の本を読んで、自分で何かをやろうという人が出てきているように感じる。
結局、新しい流れを作るのは世代交代。歴史を振り返っても、新しい動きを作った人はみんな若い人だ。ただ、その若い人たちは、若い人だけで何かをやったのではなく、必ず前の世代のサポートを受けている。
「これからの時代に、どんなスキルが必要なのですか」とよく質問される。だが、何か特定のスキルがあるかどうかは、さほど重要ではない。
新しい条件においては、既存のスキルとは違う新しいスキルが必要になる。だから、まずは新しい状況に飛び込んで、実践を通じてスキルを身につけていくほうがいい。若い人はとくに学習速度が速いので、そちらのほうが効率的だ。
そもそも、スキルよりも、ビジネスと関係のない教養のほうが役立つことも多い。 最近、講演をするときに、「ワイマール共和制を知っていますか」と聴衆に尋ねているが、知らない人が多い。受験勉強で、日本史や地理のほうが点数をとりやすいから、みんな世界史をしっかり勉強していない。
しかし、ワイマール共和制の知識は極めて重要だ。ナチス・ドイツが出現する前に、ドイツは極めて理想的な憲法を制定し、理想的な民主主義国家をつくろうとした。しかし、それはうまくいかず、人々は絶望してナチスによる独裁を選んだ。
そうした歴史な経緯を知っていれば、これからの日本で起きかねない怖いシナリオがすぐ理解できるようになる。それこそが教養の本質であって、世界史の年号や言葉を暗記することに意味はない。
■ 山中さんはなぜノーベル賞を取れたのか
これからの時代に求められるのは、中央集権的なリーダーではなく、群雄割拠的なリーダーだ。リーダーというとき、われわれは大きい組織のリーダーをイメージしがちだが、真に必要なリーダーは、最初は一人だったりする。
たとえば、ノーベル賞を受賞した山中伸弥さんも、賞につながるきっかけは、臨床医に挫折した後、奈良先端科学技術大学院大学で研究者として働いているときにあった。
日本の劣悪な環境に絶望しながらも、何とかメンバーを集めるために、みんなと違う研究テーマに取り組もうとして、独立行政法人の科学技術振興機構に予算を申請した。審査会では、ほとんどの人が「この研究はやめるべきだ」と反対した。ところが、元大阪大学総長の岸本忠三さんだけが、「これはやるべきだ」と言って予算がついた。それが、ノーベル賞受賞へとつながった。
だから、今求められているのは、山中さんのように、リスクが高い、うまくいくかどうかわからないことを最初に始める人だ。
リーダーの仕事とは、大企業のサラリーマンたちのやる気を無理やり出させることではない。そういうリーダーは日本に余っている。本当に必要なリーダーは、何もないところから始める一人目だ。もし、そういうリーダーが周りにいないなら、あなた自身がリーダーになって、新しいことを始めればいい。