自身の経験をつづった『不格好経営』が2013年に話題となったディー・エヌ・エー(DeNA)取締役ファウンダーの南場智子氏。14年3月までに「60本のゲームを出し市場に問う」と意気込む南場氏に、14年の展望を聞いた。■ グローバル市場で国内法の縛りが制約

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 ──14年はどんな年になりますか。


 グーグルやアップル、フェイスブック、アマゾンといった国家予算に匹敵する資金と動員力を持つ巨大プラットフォームが生まれたおかげで、プレーヤーとしては世界を狙いやすい。しかし、コンテンツ提供企業で利益が出ているところは少ない。こうした独占的な力を持ったプラットフォーム側だけが利益を上げるのではなく、著作権や技術、特許を持っているプレーヤーも正当な利益を得られるよう業界としても考えていく必要がある。


 さらにプラットフォームも市場もグローバルになった今、世界企業が定めた規則・規制と国内法の双方を満たす負荷が生じている。たとえばゲームで使う仮想通貨。日本の資金決済法では、その通貨の有効期間が半年以内であれば届け出義務はないのだが、アップルの規則では有効期間を永久にしなくてはいけない。さらにコンテンツをまたいだ共通通貨を禁止しているため、ゲームごとに違う通貨が必要だ。


 弊社は今、年度末までに60本のゲームを上市する予定だが、60種類の仮想通貨を発行すれば、それぞれに資金決済法の届け出義務が生じてしまう。これはたいへんな手間だ。


 ──規制緩和はもっと必要ですか。


 日本の企業である以上、国内法に規制される。その一部は諸外国にはない厳しさを持ち、さらにそんな法律を守る日本企業と必ずしも守らない企業が競争している。外資は日本の業界自主規制など気にしない。クールジャパンで日本のコンテンツを海外に発信しようとしても、足元には整理すべき課題が残されている。


 ──コンテンツと言えば、テレビはどう変わっていくでしょうか。


 フールーやネットフリックスなどのサービスが登場しており、質のよい動画コンテンツが本格的にインターネットで楽しめるのではないか。スマートフォンやタブレット、PC、テレビ、おのおのの自由度がぐっと高まる1年になるだろう。


 ただ、ここでも著作権者にリターンが回る仕組みが必要だ。放送コンテンツがテレビから飛び出ないのは、放送業者がこれを警戒しているからだろう。文化にかかわるし、すばらしいコンテンツを作った人には応分の対価が支払われるという秩序を早急かつ国際的に作らなければならない。良識的な枠組みが作れるかどうか気になるところだ。