[香港 30日 ロイター] - 中国は長年、輸出主導で奇跡的な経済成長を実現した日本を見習い、本家をしのぐまでになったが、今度は日本が20年経過してようやく覚醒に努めている経済的な昏睡状態と同じ局面に突入する危険があるように見える。
中国が脱皮に苦労しているのは、銀行貸し出しを支えにした投資と輸出に依存した成長モデル。このためエコノミストによると経済の不均衡が是正されず、不動産に過剰な投資が行われ、鉱業から電子機器、自動車、繊維に至るまでの産業は急速にコスト面の優位を失いつつある。賃金は上昇し、投資収益率は下がり続けている。
一方で習近平国家主席と李克強首相は、経済成長が減速する中で、米国で起きたような多くの銀行破綻や雇用喪失を伴う金融危機を絶対に避ける決意だ。
だがこうした危機を阻止すれば、不健全なセクターを延命させかねない。より持続的な成長に向けた取り組みが損なわれ、その代わりにかつて日本経済の活力を奪ったような「ゾンビ銀行」や「ゾンビ企業」が生まれてしまう。
さらに中国は日本よりも急速に高齢化が進んでいることから、エコノミストは中国が不可能な課題の達成を試みているのではないかと懸念している。
モルガン・スタンレー(香港)のチーフ・アジア・エコノミスト、チェタン・アーヤ氏は「わたしはデフレのリスクを心配している」と述べた。
なお7.5%の成長ペースを維持し、消費者物価の前年比上昇率が2.7%という経済では、デフレなど起こりそうもないように思われる。しかしエコノミストによると、中国は多くの面で、バブル崩壊直前の1989年当時の日本に似通っているという。
中国は日本と同じく、銀行に依存して輸出企業に投資資金を供給し、雇用の創出や開発のファイナンスを行い、その見返りとして銀行が大きな利益を得られるように金利を規制してきた。そして最も収益性の高い貸し出しは最低リスクの借り手に対するものであるので、銀行は大手国営企業に融資を集中した。
1980年代の日本のように、中国もこうした問題に金融セクターにおける部分的な自由化で対応しようと考え、新たな金融手段や債券市場などを創出。ところが日本と同様、これが銀行により賢明な行動を取らせることはなく、逆に不動産バブルを助長する結果になった。2009年に中国が世界金融危機を受けて銀行貸し出しをてこにした4兆元規模の経済対策を打ち出すと、事態はさらに悪化した。
JPモルガン・チェース(香港)によると、日本の銀行貸し出しの対国内総生産(GDP)比が1980年から90年の間に127%から176%に拡大したように、中国も2000年の105%から昨年には187%まで膨らんでいる。
<銀行貸し出しに絡むリスク>
中国が現在抱える問題は、新規投資が生み出す付加価値が減少を続けていることだ。経済の減速は既にデフレ圧力の兆しを生み出しており、生産者物価は1年4カ月連続でマイナスを記録。モルガン・スタンレーは、実質借り入れコストが8.7%で成長率を上回っている点を指摘する。
それゆえに中国政府が推進する改革が、金融システム全体を揺るがすようなデフォルトが相次ぐ事態を誘発するほどに成長率を押し下げてしまうリスクがある。
JPモルガン(香港)のシニア中国エコノミスト、Grace Ng氏は「銀行貸し出しの伸びを抑えるのは非常に重要だ。ただ、貸し出し抑制やデレバレッジをやり過ぎれば、実体経済に過大な下振れリスクをもたらす恐れがある」と述べた。
同氏やその他のエコノミストが警告する最大のリスクは、中国政府が社会不安の発生を避けるためにそうした痛みを受け入れるのを拒絶し、経営難に陥っている借り手に銀行が貸し出しを続けるよう求める事態だ。これは90年代に日本の銀行がやったことで、再び経済成長を高めてくれるかもしれないような利益を生む新規ベンチャーへの貸し出しを妨げることになる。
こうした中で中国政府が最近打ち出した成長鈍化を和らげる措置については評価が分かれている。李首相が先週明らかにした中小企業向け減税や輸入業者に対する行政手続きの簡素化は歓迎すべき構造改革と受け止められているが、貿易金融の拡大や鉄道の投資促進は小型の政府救済の気配が漂う。
人民銀行(中央銀行)が今月発表した銀行貸出金利の下限撤廃方針に対しても、一部エコノミストはリスクに応じた貸出金利設定ができるようになる前向きの動きとみなす一方、これは銀行がより困窮した借り手に資金を回せるようにするのを後押しする日本的な規制当局の裁量だとの見方も出ている。
大阪経済大学経済学部の高橋亘教授は、貸出金利の下限撤廃に関して「銀行は利ざやが縮小するので、融資基準を緩和して貸出量を増やそうとするだろう。これは80年代終盤の邦銀にまつわるストーリーだ」と話した。
<解決策も日本に存在>
エコノミストの中には、中国の事態を日本になぞらえるのは行き過ぎだとの声もある。アジア開発銀行(ADB)のチーフエコノミスト、イ・チャンヨン氏は「90年代の日本に中国を対比させるのはいささか大げさ過ぎる」と主張。同氏など一部の専門家は、日本に比べて中国は開発度が低く、潜在的な需要が存在するとしている。
中国の貧しい内陸部は過剰設備とは無縁で、ほどなくインフラ投資プロジェクトが必要になる。農村部の人々の都市への流入も経済成長の源といえる。
それでも都市化はかつてほどの成長押し上げ効果はないかもしれない。既に全人口の半数以上が都市部に移っており、農村部人口の年齢は中央値で約40歳と、新たな職に適用しやすい層ではなくなっている。
最終的には、中国の人口動態こそが同国を日本のようなデフレの道に着実に向かわせる可能性がある。一人っ子政策のため中国の労働力人口は既に減りつつあり、日本では同人口減少が90年代に起きて、消費の減退を通じて成長率の急速な落ち込みにつながった。
こうした問題の解決策もまた日本に存在するだろう。日本政府は大胆な金融緩和、財政支出拡大、そしてまだほとんどは実行されていないが経済成長の制約を取り除く措置を打ち出すことで、デフレと闘っている。
モルガン・スタンレーのアーヤ氏は「貸し出しブームの後のデフレを回避するためには2つのことが必要になる。1つは適切な財政金融政策、もう1つは構造改革だ」と語った。
(Wayne Arnold記者)
中国が脱皮に苦労しているのは、銀行貸し出しを支えにした投資と輸出に依存した成長モデル。このためエコノミストによると経済の不均衡が是正されず、不動産に過剰な投資が行われ、鉱業から電子機器、自動車、繊維に至るまでの産業は急速にコスト面の優位を失いつつある。賃金は上昇し、投資収益率は下がり続けている。
一方で習近平国家主席と李克強首相は、経済成長が減速する中で、米国で起きたような多くの銀行破綻や雇用喪失を伴う金融危機を絶対に避ける決意だ。
だがこうした危機を阻止すれば、不健全なセクターを延命させかねない。より持続的な成長に向けた取り組みが損なわれ、その代わりにかつて日本経済の活力を奪ったような「ゾンビ銀行」や「ゾンビ企業」が生まれてしまう。
さらに中国は日本よりも急速に高齢化が進んでいることから、エコノミストは中国が不可能な課題の達成を試みているのではないかと懸念している。
モルガン・スタンレー(香港)のチーフ・アジア・エコノミスト、チェタン・アーヤ氏は「わたしはデフレのリスクを心配している」と述べた。
なお7.5%の成長ペースを維持し、消費者物価の前年比上昇率が2.7%という経済では、デフレなど起こりそうもないように思われる。しかしエコノミストによると、中国は多くの面で、バブル崩壊直前の1989年当時の日本に似通っているという。
中国は日本と同じく、銀行に依存して輸出企業に投資資金を供給し、雇用の創出や開発のファイナンスを行い、その見返りとして銀行が大きな利益を得られるように金利を規制してきた。そして最も収益性の高い貸し出しは最低リスクの借り手に対するものであるので、銀行は大手国営企業に融資を集中した。
1980年代の日本のように、中国もこうした問題に金融セクターにおける部分的な自由化で対応しようと考え、新たな金融手段や債券市場などを創出。ところが日本と同様、これが銀行により賢明な行動を取らせることはなく、逆に不動産バブルを助長する結果になった。2009年に中国が世界金融危機を受けて銀行貸し出しをてこにした4兆元規模の経済対策を打ち出すと、事態はさらに悪化した。
JPモルガン・チェース(香港)によると、日本の銀行貸し出しの対国内総生産(GDP)比が1980年から90年の間に127%から176%に拡大したように、中国も2000年の105%から昨年には187%まで膨らんでいる。
<銀行貸し出しに絡むリスク>
中国が現在抱える問題は、新規投資が生み出す付加価値が減少を続けていることだ。経済の減速は既にデフレ圧力の兆しを生み出しており、生産者物価は1年4カ月連続でマイナスを記録。モルガン・スタンレーは、実質借り入れコストが8.7%で成長率を上回っている点を指摘する。
それゆえに中国政府が推進する改革が、金融システム全体を揺るがすようなデフォルトが相次ぐ事態を誘発するほどに成長率を押し下げてしまうリスクがある。
JPモルガン(香港)のシニア中国エコノミスト、Grace Ng氏は「銀行貸し出しの伸びを抑えるのは非常に重要だ。ただ、貸し出し抑制やデレバレッジをやり過ぎれば、実体経済に過大な下振れリスクをもたらす恐れがある」と述べた。
同氏やその他のエコノミストが警告する最大のリスクは、中国政府が社会不安の発生を避けるためにそうした痛みを受け入れるのを拒絶し、経営難に陥っている借り手に銀行が貸し出しを続けるよう求める事態だ。これは90年代に日本の銀行がやったことで、再び経済成長を高めてくれるかもしれないような利益を生む新規ベンチャーへの貸し出しを妨げることになる。
こうした中で中国政府が最近打ち出した成長鈍化を和らげる措置については評価が分かれている。李首相が先週明らかにした中小企業向け減税や輸入業者に対する行政手続きの簡素化は歓迎すべき構造改革と受け止められているが、貿易金融の拡大や鉄道の投資促進は小型の政府救済の気配が漂う。
人民銀行(中央銀行)が今月発表した銀行貸出金利の下限撤廃方針に対しても、一部エコノミストはリスクに応じた貸出金利設定ができるようになる前向きの動きとみなす一方、これは銀行がより困窮した借り手に資金を回せるようにするのを後押しする日本的な規制当局の裁量だとの見方も出ている。
大阪経済大学経済学部の高橋亘教授は、貸出金利の下限撤廃に関して「銀行は利ざやが縮小するので、融資基準を緩和して貸出量を増やそうとするだろう。これは80年代終盤の邦銀にまつわるストーリーだ」と話した。
<解決策も日本に存在>
エコノミストの中には、中国の事態を日本になぞらえるのは行き過ぎだとの声もある。アジア開発銀行(ADB)のチーフエコノミスト、イ・チャンヨン氏は「90年代の日本に中国を対比させるのはいささか大げさ過ぎる」と主張。同氏など一部の専門家は、日本に比べて中国は開発度が低く、潜在的な需要が存在するとしている。
中国の貧しい内陸部は過剰設備とは無縁で、ほどなくインフラ投資プロジェクトが必要になる。農村部の人々の都市への流入も経済成長の源といえる。
それでも都市化はかつてほどの成長押し上げ効果はないかもしれない。既に全人口の半数以上が都市部に移っており、農村部人口の年齢は中央値で約40歳と、新たな職に適用しやすい層ではなくなっている。
最終的には、中国の人口動態こそが同国を日本のようなデフレの道に着実に向かわせる可能性がある。一人っ子政策のため中国の労働力人口は既に減りつつあり、日本では同人口減少が90年代に起きて、消費の減退を通じて成長率の急速な落ち込みにつながった。
こうした問題の解決策もまた日本に存在するだろう。日本政府は大胆な金融緩和、財政支出拡大、そしてまだほとんどは実行されていないが経済成長の制約を取り除く措置を打ち出すことで、デフレと闘っている。
モルガン・スタンレーのアーヤ氏は「貸し出しブームの後のデフレを回避するためには2つのことが必要になる。1つは適切な財政金融政策、もう1つは構造改革だ」と語った。
(Wayne Arnold記者)